あの春の陽だまりの
COLORFUL LOVE 薄紅の風ゆれて
さなぎが蝶になるように。
愛を知った女は美しく羽ばたきはじめ、それを知った男は、自分の元にいてほしいと願う。
蝶にしたのは、その男なのに。
キミが蝶になるならば、どうか僕だけの蝶でいて。
あの春の陽だまりの
「ねえ、パパ。お兄ちゃまは?」
「お兄ちゃま、ご一緒じゃないの?」
「一緒だったよ。でも途中で別れたんだ」
「お兄ちゃまったら、きっとお姉ちゃまのところね」
「きっとそうね」
「絵夢も芽夢も、よくわかるなあ。そうだよ。お兄ちゃまは春のお姉ちゃまのところへ行ったよ」
「ハルノ? パパ、それはちょっと違うわ」
「そうね、違うわ。『ハルノ』じゃなくて『マキノ』よ」
「マキノ?」
「そうよ。お姉ちゃまのお名前は、『まきのつくし』よ。お兄ちゃまがいつも、『まきの』って呼んでるもの」
「へえ。牧野つくしさん、か。ああ、それでこの前『いつでも春で』って言っていたんだね」
「残念。それもちょっと違うわ」
「違うのかい?」
「たしかにお名前は『つくし』だけれど、そういうことじゃないわ」
「じゃあ、どういう意味なんだい?」
「お姉ちゃまは、いつでも春みたいに笑うの。大きなお口を開けて笑うところは、レディとしてはちょっとお行儀が悪いけど、でもすごくすごく楽しそうなの」
「それで、すっごくすっごく優しいのよ。春みたいにぽかぽかしてるの」
「そうか。絵夢も芽夢も、お姉ちゃまが大好きなんだね」
「「うん。大好き。」」

だってね、だってね。
お姉ちゃまが笑ってる時は、お兄ちゃまが優しいお顔をするんだもの。
お兄ちゃまの優しいお顔が一番好きなんだもの――。
――ありがとう。をこめて  はなみずき
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